2013年9月30日月曜日

糖尿病の分類⑤(続発性糖尿病&ステロイド糖尿病)

今回は前回の続きで、1型、2型糖尿病以外の糖尿病ということで、

続発性糖尿病ステロイド糖尿病についてお話していきたいと思います。 


続発性糖尿病 

続発性糖尿病(ぞくはつせいとうにょうびょう、二次性糖尿病)は、

他の疾患によって引き起こされる糖尿病です。


以下に挙げたものは代表的な疾患で、ほかにも原因となる疾患は存在します。

   ・ グルカゴンを異常分泌するグルカゴン産生腫瘍

   ・ 糖質コルチコイド(ステロイド)作用が異常増加するクッシング症候群、原発性アルドステロン症

   ・ アドレナリンを異常分泌する褐色細胞腫

   ・ 成長ホルモンを異常分泌する成長ホルモン産生腫瘍(先端巨大症)

   ・ 肝硬変 ・慢性膵炎、ヘモクロマトーシス、膵癌

   ・ 筋緊張性ジストロフィー ・薬剤性(サイアザイド系利尿薬、フェニトイン、糖質コルチコイドなど)


 ステロイド糖尿病 

ステロイド糖尿病は、

膠原病などでステロイドを長期に内服したことによって

生じる続発性糖尿病です。 


ステロイド(糖質コルチコイド)作用の、

肝臓の糖新生亢進作用、

末梢組織のインスリン抵抗性の亢進、

食欲増進作用が関わっているとされています。

ステロイドを減量すれば軽快し、

ステロイド糖尿病では通常の糖尿病と異なり、

網膜症などの血管合併症が起こりにくいとされています。 

食後高血糖のパターンをとることが多く、

入院中ならばインスリンやαGIといった経口剤を用いることが多いようです。


 次回は、妊婦さんがなりやすい妊娠糖尿病について解説していきたいと思います。



2013年9月26日木曜日

糖尿病の分類④(遺伝子異常)


今回は、1型2型以外の糖尿病

中でも遺伝子異常による糖尿病についてお話していきたいと思います。



 1型、2型の糖尿病は、その原因が完全に明らかである訳ではありません。


 一方、この項目に分類される疾患は、

特定の遺伝子の機能異常によって糖尿病が発症している、

という原因がわかっている糖尿病です。


頻度は極めて稀で、いずれも比較的若年(一般的に25歳以下)に発症し、

1型ほど重症ではなく、強い家族内発症がみられるという特徴がありますが、

臨床所見は大きく異なっているようです。


  ・  若年発症成人型糖尿病

  ・  ミトコンドリア遺伝子異常 

  ・  インスリン受容体異常症 

  ・  インスリン自体の遺伝子異常 


いずれも診断にはゲノムDNAやミトコンドリアDNAを検体とした

特殊な検査が必要になります。


今回も専門用語が多く申し訳ありません。 


「すごく稀だけど、1型、2型の糖尿病以外に

遺伝子異常が原因糖尿病になる場合もあるんだ。」 と、

いった具合に思っていただければ十分かと思います。 



次回は、続発性糖尿病ステロイド糖尿病について解説していきたいと思います。



2013年9月25日水曜日

糖尿病の分類③(2型糖尿病)

今回も前回からの続きで、

“2型糖尿病についてお話していきたいと思います。 



2型糖尿病(にがたとうにょうびょう)は、

インスリン分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病になります。 

一般的に「生活習慣が悪かったので糖尿病になりました」と言う場合、

この2型糖尿病を指します。

欧米では、感受性低下(インスリン抵抗性が高い状態)のほうが原因として強い影響をしめすが、

日本では、膵臓のインスリン分泌能低下も重要な原因になります。

少なくとも初期には、前者では太った糖尿病

後者ではやせた糖尿病になります。

遺伝的因子と生活習慣がからみあって発症する生活習慣病で、

日本では糖尿病全体の9割を占めています。 


発症率を変動させる要因として、

「マグネシウム摂取量が関与している」との報告があり、

インスリン抵抗性、慢性炎症、飲酒習慣を有する患者では、

摂取量の上昇が発症抑制に効果があるとされています。

 しかし、一方で、マグネシウム摂取量と

糖尿病発症との関連なしとの報告もあります。

(今現在では、正直よくわからん。と、いったところです。)

 2型糖尿病が発症する原因は完全に明らかではありませんが、

大筋を言うと、

遺伝的に糖尿病になりやすい体質(遺伝因子)の人が、

糖尿病になりやすいような生活習慣を送ること(環境因子)によって

2型糖尿病になると考えられています。 


遺伝的な原因としては、

KCNQ2、PPARG、KCNJ11、TCF2L7などといった遺伝子上の配列の違いによって、

同じような生活習慣を送っていても、

ある人は糖尿病が起こりやすく、

別の人は起こりにくくなるという違いがあることがわかってきています。

 また、日本で欧米と比較して多く見られる

インスリン分泌能低下を主要因とするやせ型糖尿病の原因遺伝子として

KCNJ15が挙げられていて、

日本人において発見されたこの遺伝子上の危険因子となる配列は

欧米人にはきわめてまれであると報告されています。


一方、糖尿病になりやすくなる環境因子としては、

圧倒的な危険因子として肥満が挙げられるほか、

喫煙運動不足などがあります。 

慢性に高血糖が持続すると、

膵β細胞機能が障害されると共に、

過剰な血糖をグリコーゲンに転換して蓄える筋肉や、

肝臓、脂肪に転換して蓄える脂肪組織においても

インスリン抵抗性が生じて更なる高血糖をもたらし、

これがインスリン分泌不全、インスリン抵抗性を更に増悪させ、

糖尿病状態を一層悪化させる状態が糖毒性として取り上げられています。

 さらに血中遊離脂肪酸の上昇がみられる肥満では

肥大した脂肪細胞から種々のサイトカインや脂肪酸が分泌され、

遊離脂肪酸が膵β細胞機能を障害すると共に、

インスリン抵抗性が増強される状態が脂肪毒性として取り上げられています。



今回のお話は少し専門用語も出てきているので、

難しく感じるかもしれませんね。 


次回は、1型2型以外の糖尿病について解説していきたいと思います。



2013年9月24日火曜日

糖尿病の分類②(1型糖尿病)

今回は、前回の続きで、

“1型糖尿病についてお話していきたいと思います。 


1型糖尿病(いちがたとうにょうびょう)は、

膵臓のランゲルハンス島で

インスリンを分泌しているβ細胞が死滅する病気です。 


その原因は、

主に自分の免疫細胞が自らの膵臓を攻撃するためと考えられていますが(自己免疫性)、

まれに自己免疫反応の証拠のない1型糖尿病もみられているようです(特発性)。


自己免疫の異常が重要な要因の一つと考えられていますが、

自己免疫系自体が不明な部分を多く残すため、

今現在では、

1型糖尿病の発症メカニズムは正確には明らかではありません。


 一般的に、

「生活習慣が悪かったので、糖尿病になりました。」と言う場合、

1型糖尿病を指すことはほとんどありません。


 患者の多くは、10代でこれを発症します。 


血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極度に低下するか、

ほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し、

糖尿病性ケトアシドーシスを起こす危険性が高いです。 


そのため、ほとんどのケースでは、

インスリン注射などの強力な治療を常に必要とします。 


常にインスリン注射を携帯し、

毎日自分で注射しなくてはなりません。


1型糖尿病は糖尿病の一種ではありますが、

生活習慣病の影響による2型糖尿病とは違い、

1型は自己免疫疾患や特発性のものがあり、

両者は全く異なる病気です。


 次回は、2型糖尿病について解説していきたいと思います。



2013年9月22日日曜日

糖尿病の分類①


今回は、糖尿病の分類についてお話していきたいと思います。


血液中のブドウ糖濃度(血糖値、血糖)は、

様々なホルモン(インスリン、グルカゴン、コルチゾールなど)の働きによって、

正常では常に一定範囲内に調節されています。


いろいろな理由によってこの調節機構が破綻すると、

血液中の糖分が異常に増加し、糖尿病になります。


糖尿病は大きく1型と2型にわけられますが、

これはこの調節機構の破綻の様式の違いを表しています。


1型糖尿病では、膵臓のβ細胞が何らかの理由によって破壊されることで、

血糖値を調節するホルモンの一つであるインスリンが枯渇してしまい、

高血糖、糖尿病へと至ります。


一方、2型糖尿病では、血中にインスリンは存在するが、

肥満などを原因としてインスリンの働きが悪くなるか、

あるいは自己免疫的に破壊された訳ではないが、

膵臓のβ細胞からのインスリン分泌量が減少し、

結果として血糖値の調整がうまくいかず糖尿病となります。


その他にも、妊娠糖尿病をはじめとして発症機序の違いに基づくいくつかの病名があって、

これらをひとまとめにしている糖尿病は、

病名というより“症候群”と言ったほうが適切かもしれません。


次回は、今回の続きで、糖尿病の分類の詳細について解説していきたいと思います。

(次回は1型糖尿病の解説です。)



2013年9月20日金曜日

糖尿病の原因




今回は、糖尿病”の原因についてお話していきたいと思います。


糖尿病は、ホルモンの一種であるインスリンの作用が不足することによって、

慢性的に血糖値が上昇する(血糖値が高い状態が持続する)病気です。


※ インスリン : 血糖値を抑える作用があります。


インスリンは、膵臓のランゲルハンス島β細胞という箇所で作られます。

常に少量が血液中に分泌される「基礎分泌」と、

食事摂取による血糖値上昇に伴い分泌量が増える「追加分泌」があり、

肝臓や筋肉、脂肪組織などに働いて血糖値を低下させます。


インスリンの作用が不足する主な原因は、


1) 膵臓からのインスリン分泌の低下


2) 膵臓からのインスリン分泌はあるものの、

      肝臓や筋肉でのインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性の存在



が挙げられ、(1)および(2)の両方であることもあります。

糖尿病は、初期の頃は自覚症状がほとんどないため、

健康診断などを定期的に受け、

血糖値の上昇を早期に発見することが必要になってきます。

自覚症状として、口渇多飲多尿体重減少などが現れてきたときには、

糖尿病は既に進行しており、

多くの場合、中等度以上の高血糖が長期間続いている

状態になっている可能性が非常に高いです。



次回は、糖尿病の分類について解説していきたいと思います。




2013年9月18日水曜日

糖尿病とは?


糖尿病について、これから数回にわたり、

誰にでもわかりやすくをコンセプトに解説していきたいと思います。


糖尿病(とうにょうびょう ; diabetes mellitus)とは、

単純に血糖値(血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度)が

病的に高い状態を指す病名になります。


一言に血糖値が高いと言っても、無症状の状態から、

著しいのどの渇き多飲大量の尿を排泄する状態、体重減少

重篤になると意識障害昏睡に至るまで様々な状態があり、

これらの状態をすべてまとめて、

血糖値やヘモグロビンA1c値が一定の基準を超えている場合を

糖尿病 と言っています。


糖尿病は高血糖そのものによる症状を起こすこともあるほか、

長期にわたると、血中の高濃度のグルコースがそのアルデヒド基の反応性の高さのため、

血管内皮のタンパク質と結合する糖化反応を起こし、

体中の微小血管が徐々に破壊されていき、

目、腎臓を含む体中の様々な臓器に重大な障害

(糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害など)

を及ぼす可能性があり、

糖尿病治療の主な目的はそれら重篤な合併症を防ぐことにあります。



次回は、糖尿病の原因や糖尿病の分類について触れていきたいと思います。