今回は、インスリン療法のその他の療法についてお話していきたいと思います。
基礎インスリン分泌が保たれているような患者では、
速効型(または超速効型)インスリンの毎食前3回注射など
強化インスリン療法に準じた注射方法があります。
また、頻回のインスリン注射が困難な患者や強化インスリン療法が適応とならない患者では、
混合型または中間型の一日1回~2回投与という方法もあります。
具体的には、Nを朝食前に1回打ちにしたり、
混合型製剤を朝食前、夕食前の2回打ちにし、
食後血糖を抑えるためαグルコシターゼ阻害薬を併用したりするなどが
オーソドックスと言われています。
病棟などでは、インスリンスライディングスケールという方法をとることがあります。
これは各食前の血糖値に基づいてその時にうつインスリンを決定するという方法で、
短期間ならば良いが血糖の変動を激しくするので、
できることなら避けたほうが良いでしょう。
このような投与法でもインスリン量は0.2単位/kgにて開始し、
0.5単位/kgまで増量可能です。
中間型を2回打ちする場合は朝:夕を2:1または3:2の比率とすることが多く、
中間型インスリンが一日10単位以上の場合は一日2回と分けることが多いようです。
食事をしないIVHの患者では、高カロリー輸液にRを混ぜることもあります。
この場合はグルコース10gにつきR1単位から始めて
血糖を測定から至適量を決めていきます。
注意として、速効型インスリン以外の静注は禁止になります。
インスリン療法の注意点として、
インスリン療法の絶対的適応例では入院による導入が望ましいと言われていますが、
相対的適応例におけるインスリン療法の開始や、
経口血糖降下薬からの切り替えの場合は、外来で行うことが多いようです。
外来での導入に関しての危険性を評価するには、
・ケトーシスがないこと
・感染症や悪性腫瘍といった高血糖の原因となる他の疾患が存在しないこと
・網膜症(特に福田分類でBとなるもの)、腎機能低下といった進行した糖尿病慢性合併症が存在しないこと
・食事療法、インスリン注射、血糖自己測定といった自己管理能力があること
を確認することが望ましいです。
これらに該当するようならば、糖尿病専門医がいる施設や教育入院を用いないと、
外来でのコントロールは非常に危険です。
この際、インスリン量の調節のため外来を頻回にすることで対処することが多いようです。
次回は、糖尿病治療薬の治験について解説していきたいと思います。
一応“薬剤師”であるハルちゃんパパが、“糖尿病”について誰にでもわかりやすく理解できるようにまとめたブログです。最近気になる方、すでに糖尿病で悩まれている方などの役に立てれば幸いです。
2013年11月25日月曜日
2013年11月19日火曜日
糖尿病の治療⑫(インスリン療法②)
今回は、強化インスリン療法についてお話していきたいと思います。
または、持続皮下インスリン注入(CSII)に血糖自己測定(SMBG)を併用し、
医師の指示に従い、患者自身がインスリン注射量を決められた範囲で調節しながら、
良好な血糖コントロールを目指す方法です。
基本的には、食事をしている患者では、
各食前、就寝前の一日四回血糖を測定し、
各食前に速効型インスリン(R)を就寝前に中間型インスリン(N)の
一日四回を皮下注にて始めます。
オーソドックスなやり方としては、各回3~4単位程度、一日12~16単位から始めます。
朝食前のRは昼食前の血糖を下げ、
昼食前のRは夕食前の血糖を下げ、
夕食前のRは就寝前の血糖を下げ、
就寝前のNは朝食前の血糖を下げると考えると分かりやすいかもしれません。
量を調節する場合は、2単位程度までの変更にとどめた方が安全です。
次回は、その他の療法について解説していきたいと思います。
<強化インスリン療法>
強化インスリン療法とは、インスリンの頻回注射になります。または、持続皮下インスリン注入(CSII)に血糖自己測定(SMBG)を併用し、
医師の指示に従い、患者自身がインスリン注射量を決められた範囲で調節しながら、
良好な血糖コントロールを目指す方法です。
基本的には、食事をしている患者では、
各食前、就寝前の一日四回血糖を測定し、
各食前に速効型インスリン(R)を就寝前に中間型インスリン(N)の
一日四回を皮下注にて始めます。
オーソドックスなやり方としては、各回3~4単位程度、一日12~16単位から始めます。
朝食前のRは昼食前の血糖を下げ、
昼食前のRは夕食前の血糖を下げ、
夕食前のRは就寝前の血糖を下げ、
就寝前のNは朝食前の血糖を下げると考えると分かりやすいかもしれません。
量を調節する場合は、2単位程度までの変更にとどめた方が安全です。
次回は、その他の療法について解説していきたいと思います。
2013年11月11日月曜日
糖尿病の治療⑪(インスリン療法①)
今回は、インスリン療法についてお話していきたいと思います。
まずは、インスリン療法の適応について説明します。
インスリン療法の適応は以下の通りです。
・インスリン依存状態であるとき
・糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、乳酸アシドーシス)であるとき
・重症の肝障害、腎障害を合併する時
・重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき
・糖尿病合併妊娠(妊娠糖尿病で食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)
・中心静脈栄養時の血糖コントロール
<インスリン療法の相対的適応>
・インスリン非依存状態の例でも著明な高血糖(例えば、空腹時血糖値250mg/dl以上、随時血糖値350mg/dl以上)を認める場合
・経口薬療法では良好な血糖コントロールが得られない場合(スルホニルウレア剤の一次無効、二次無効など)
・やせ型で栄養状態が低下している場合
・ブドウ糖毒性を積極的に解除する場合
インスリンの適応から外れた場合は、
軽症か重症かによって治療方法が若干異なります。
インスリン療法としては、強化インスリン療法とその他の治療法に分けられます。
まずはインスリンの適応があるかどうかを判断します。
インスリンの適応があると判断したら、
患者の状態を把握し、インスリン強化療法を行うのか、
それともその他の治療法を行うのかを判断します。
インスリン療法の基本は、
健常者にみられる血中インスリンの変動パターンを
インスリン注射によって模倣することです。
健常者のインスリン分泌は、基礎インスリン分泌と、
食事後のブドウ糖やアミノ酸刺激による追加インスリン分泌からなっています。
これをもっともよく再現できるのは強化インスリン療法ですが、
手技が煩雑であるのがネックになります。
今後の糖尿病管理も強化インスリン療法を行うのであれば、
患者教育なども行い導入する価値はありますが、
手術や処置で一時的に経口血糖降下薬を用いられないという場合、
生活スタイルから強化インスリン療法を行うのが不可能な場合は、
その他の療法が選択されます。
次回は、今回の続きで、より詳しく解説していきたいと思います。
まずは、インスリン療法の適応について説明します。
インスリン療法の適応は以下の通りです。
<インスリン療法の絶対的適応>
・インスリン依存状態であるとき
・糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、乳酸アシドーシス)であるとき
・重症の肝障害、腎障害を合併する時
・重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき
・糖尿病合併妊娠(妊娠糖尿病で食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)
・中心静脈栄養時の血糖コントロール
<インスリン療法の相対的適応>
・インスリン非依存状態の例でも著明な高血糖(例えば、空腹時血糖値250mg/dl以上、随時血糖値350mg/dl以上)を認める場合
・経口薬療法では良好な血糖コントロールが得られない場合(スルホニルウレア剤の一次無効、二次無効など)
・やせ型で栄養状態が低下している場合
・ブドウ糖毒性を積極的に解除する場合
インスリンの適応から外れた場合は、
軽症か重症かによって治療方法が若干異なります。
インスリン療法としては、強化インスリン療法とその他の治療法に分けられます。
まずはインスリンの適応があるかどうかを判断します。
インスリンの適応があると判断したら、
患者の状態を把握し、インスリン強化療法を行うのか、
それともその他の治療法を行うのかを判断します。
インスリン療法の基本は、
健常者にみられる血中インスリンの変動パターンを
インスリン注射によって模倣することです。
健常者のインスリン分泌は、基礎インスリン分泌と、
食事後のブドウ糖やアミノ酸刺激による追加インスリン分泌からなっています。
これをもっともよく再現できるのは強化インスリン療法ですが、
手技が煩雑であるのがネックになります。
今後の糖尿病管理も強化インスリン療法を行うのであれば、
患者教育なども行い導入する価値はありますが、
手術や処置で一時的に経口血糖降下薬を用いられないという場合、
生活スタイルから強化インスリン療法を行うのが不可能な場合は、
その他の療法が選択されます。
次回は、今回の続きで、より詳しく解説していきたいと思います。
2013年11月7日木曜日
糖尿病の治療⑩(薬物療法⑦)
今回は、ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤という
新しいジャンルの経口血糖降下薬についてお話していきたいと思います。
消化管ホルモンで、グルコース依存性にインスリン分泌を促す
インクレチンというホルモンがあります。
ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤は、
インクレチンの分解酵素であるDPP-IVを阻害する事で、
インクレチンの血中濃度を上昇させ、
その結果インスリン分泌が促進されます。
GLP-1には胃排泄能低下作用があり、血糖上昇が穏やかになり、
インスリンを産生するランゲルハンス島β細胞の増殖を
促すのではないかと期待されています。
低血糖の副作用は少ないようです。
次回は、インスリン療法について解説していきたいと思います。
新しいジャンルの経口血糖降下薬についてお話していきたいと思います。
消化管ホルモンで、グルコース依存性にインスリン分泌を促す
インクレチンというホルモンがあります。
ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤は、
インクレチンの分解酵素であるDPP-IVを阻害する事で、
インクレチンの血中濃度を上昇させ、
その結果インスリン分泌が促進されます。
GLP-1には胃排泄能低下作用があり、血糖上昇が穏やかになり、
インスリンを産生するランゲルハンス島β細胞の増殖を
促すのではないかと期待されています。
低血糖の副作用は少ないようです。
一般名
|
商品名
|
血中半減期
(hr)
|
一日使用量
(mg)
|
特徴的な禁忌
・慎重投与
|
シタグリプチン
|
グラクティブ®
ジャヌビア®
|
9.6~12.3
|
50~100
|
(慎)中等度以上の腎機能障害
|
ビルダグリプチン
|
エクア®
|
1.77~3.95
|
50~100
|
(禁)重度肝機能障害
(慎)肝機能障害・中等度以上の腎機能障害・心不全
|
アログリプチン
|
ネシーナ®
|
17.1
|
25
|
(慎)中等度以上の腎機能障害・心不全
|
リナグリプチン
|
トラゼンタ®
|
96.9~113
|
5
|
特になし
|
テネリグリプチン
|
テネリア®
|
17.4~30.2
|
20~40
|
(慎)高度肝機能障害・心不全
|
アナグリプチン
|
スイニー®
|
α相1.87~2.02
β相5.75~6.20 |
100~200
|
(慎)重度腎機能障害
|
サキサグリプチン
|
オングリザ®
|
6.0~6.8
|
2.5~5
|
特になし
|
次回は、インスリン療法について解説していきたいと思います。
2013年11月3日日曜日
糖尿病の治療⑨(薬物療法⑥)
今回も、インスリン抵抗性改善薬についてお話していきたいと思います。
<チアゾリジン系誘導体(TZD薬)>
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ (PPAR‐γ) 作働薬や
インスリン抵抗性改善薬とも呼ばれています。
核内受容体のひとつであるPPAR-γに結合し、
インスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする作用があります。
主として末梢組織のインスリン抵抗性改善に用います。
有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、
小用量で血糖降下作用を見る事が多いようです。
脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下するが、
その代わり肥満を助長しやすくなります。
塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトス®)だけが現在、国内で上市されています。
最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカール®)は肝障害の死亡例が相次ぎ、
その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わる
グルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると
特に副作用の発症率が高い事が示されました。
類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていませんが、
留意して使用するのが望まれます。
副作用として浮腫や貧血を合併することがありますが、
腎でのインスリン感受性亢進のため、
Naの再吸収を促進するためだといわれています。
脂肪細胞を分化誘導する一方で
骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと言われています。
副作用に浮腫があるために、心不全の既往がある患者には禁忌となります。
浮腫が出現しなくとも、効果が出ると体重が増加する傾向があるため、
食事療法のコントロールに気をつける必要があります。
大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者に対して、
心血管イベントの発症の抑制、
およびインスリン治療の導入を遅らせるという欧州での成績があるようです。
次回は、ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤について解説していきたいと思います。
<チアゾリジン系誘導体(TZD薬)>
一般名
|
商品名
|
血中半減期
(hr)
|
作用時間
(hr)
|
一日使用量
(mg)
|
ピオグリタゾン塩酸塩
|
アクトス®
|
5
|
20
|
15~45
|
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ (PPAR‐γ) 作働薬や
インスリン抵抗性改善薬とも呼ばれています。
核内受容体のひとつであるPPAR-γに結合し、
インスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする作用があります。
主として末梢組織のインスリン抵抗性改善に用います。
有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、
小用量で血糖降下作用を見る事が多いようです。
脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下するが、
その代わり肥満を助長しやすくなります。
塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトス®)だけが現在、国内で上市されています。
最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカール®)は肝障害の死亡例が相次ぎ、
その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わる
グルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると
特に副作用の発症率が高い事が示されました。
類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていませんが、
留意して使用するのが望まれます。
副作用として浮腫や貧血を合併することがありますが、
腎でのインスリン感受性亢進のため、
Naの再吸収を促進するためだといわれています。
脂肪細胞を分化誘導する一方で
骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと言われています。
副作用に浮腫があるために、心不全の既往がある患者には禁忌となります。
浮腫が出現しなくとも、効果が出ると体重が増加する傾向があるため、
食事療法のコントロールに気をつける必要があります。
大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者に対して、
心血管イベントの発症の抑制、
およびインスリン治療の導入を遅らせるという欧州での成績があるようです。
次回は、ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤について解説していきたいと思います。
2013年10月30日水曜日
糖尿病の治療⑧(薬物療法⑤)
今回は、インスリン抵抗性改善薬についてお話していきたいと思います。
インスリン抵抗性改善薬としては、
ビグアナイド剤 (BG薬)、チアゾリジン系誘導体(TZD薬)が知られています。
まずは、ビグアナイド剤(BG薬)についてお話していきますね~。
<ビグアナイド剤(BG薬)>
詳細な作用機序は不明ですが、肝臓に作用して糖新生を抑え、
筋肉での糖の取り込みを促進、
さらに腸管でのブドウ糖吸収を抑制すると考えられています。
分子標的は、AMP依存性プロテインキナーゼ(AMPPK)と考えられています。
インスリン抵抗性改善薬であるので、体重は不変から減少傾向となり、
食事療法の妨げになりません。
かつて、副作用である乳酸アシドーシス
(乳酸ピルビン酸が蓄積しやすくなるため)に対する懸念から、
あまり用いられることはありませんでした。
しかし、実際は乳酸アシドーシスの頻度は低いことが
英国でのUKPDSでの再評価によって判明しました。
乳酸アシドーシスを起こしやすい病態、
すなわち、肝障害、腎障害、心障害の既往がある患者には
使用をさけられています。
塩酸メトホルミンが主流です。
塩酸ブホルミンは、塩酸メトホルミンに比べて薬効が低く、
乳酸アシドーシスを起こしやすいと言われています。
2008年現在、インスリン抵抗性のある患者に広く使われるようになり、
TZDとの合剤も海外では販売されています。
その他の問題点は、軽度の胃腸障害ですが、
これは一時的なもので少量から開始し、ゆっくりと漸増すれば軽減できるようです。
発熱時、下痢など脱水のおそれがあるときは休薬し、
ヨード造影剤使用の際は、2日前から投与を中止する必要があります。
次回もインスリン抵抗性改善薬の続きを解説していきたいと思います。
インスリン抵抗性改善薬としては、
ビグアナイド剤 (BG薬)、チアゾリジン系誘導体(TZD薬)が知られています。
まずは、ビグアナイド剤(BG薬)についてお話していきますね~。
<ビグアナイド剤(BG薬)>
一般名
|
商品名
|
血中半減期
(hr)
|
作用時間
(hr)
|
一日使用量
(mg)
|
メトホルミン塩酸塩
|
メルビン®
|
1.5~4.7
|
6~14
|
250~750
|
ブホルミン塩酸塩
|
ジベトス®
|
3
|
6~14
|
50~150
|
詳細な作用機序は不明ですが、肝臓に作用して糖新生を抑え、
筋肉での糖の取り込みを促進、
さらに腸管でのブドウ糖吸収を抑制すると考えられています。
分子標的は、AMP依存性プロテインキナーゼ(AMPPK)と考えられています。
インスリン抵抗性改善薬であるので、体重は不変から減少傾向となり、
食事療法の妨げになりません。
かつて、副作用である乳酸アシドーシス
(乳酸ピルビン酸が蓄積しやすくなるため)に対する懸念から、
あまり用いられることはありませんでした。
しかし、実際は乳酸アシドーシスの頻度は低いことが
英国でのUKPDSでの再評価によって判明しました。
乳酸アシドーシスを起こしやすい病態、
すなわち、肝障害、腎障害、心障害の既往がある患者には
使用をさけられています。
塩酸メトホルミンが主流です。
塩酸ブホルミンは、塩酸メトホルミンに比べて薬効が低く、
乳酸アシドーシスを起こしやすいと言われています。
2008年現在、インスリン抵抗性のある患者に広く使われるようになり、
TZDとの合剤も海外では販売されています。
その他の問題点は、軽度の胃腸障害ですが、
これは一時的なもので少量から開始し、ゆっくりと漸増すれば軽減できるようです。
発熱時、下痢など脱水のおそれがあるときは休薬し、
ヨード造影剤使用の際は、2日前から投与を中止する必要があります。
次回もインスリン抵抗性改善薬の続きを解説していきたいと思います。
2013年10月29日火曜日
糖尿病の治療⑦(薬物療法④)
今回は、ブドウ糖吸収阻害薬についてお話していきたいと思います。
ブドウ糖吸収阻害薬であるアルファ・グルコシダーゼ阻害薬 (αGI薬) は、
食物性糖質の1000倍も親和性の強い糖質類似物質です。
糖質が吸収されるためには、澱粉のような多糖類から消化酵素の作用を得て、
二糖類(麦芽糖や蔗糖)、単糖類(ブドウ糖や果糖)に分解される必要があります。
その酵素、α-グルコシダーゼを阻害し、消化吸収を緩徐にすることで、
血糖の上昇をおさえるので、食後過血糖改善薬とも言われています。
これらの薬物は血糖値の食後のピークを減少させ、
食事とともに摂取すると有効であるが、
食事以外の高血糖の治療には有効ではありません。
鼓腸、膨満感、腹部不快感、下痢などの副作用がよく報告されています。
これらの原因は、消化されずに腸管にのこった糖類が醗酵し、
発生するガスによるものです。
αGIの継続的な使用によって、これらの副作用は軽減していく傾向があります。
しかし、炎症性腸疾患の患者では禁忌になります。
腸閉塞様症状に至る場合もあり、
糖尿病性神経障害で消化管蠕動障害がある場合は留意しなければなりません。
体質的に肝障害を来す例があるので、
肝トランスアミナーゼの定期的な観察を行う必要があります。
肝障害は薬物の中止とともに可逆的に改善し、αGIに体重増加作用はないため、
食事療法の妨げになりません。
少量から開始し、体を慣らしていくことで、
消化器症状によるQOL低下を防止できます。
αGI薬の使用中に低血糖が発現したときは、
澱粉や蔗糖では血糖上昇に時間が掛かるので、
ブドウ糖や清涼飲料水に砂糖の代用に使われているブドウ糖果糖液糖を
低血糖の処置に用います。
次回は、インスリン抵抗性改善薬について解説します。
ブドウ糖吸収阻害薬であるアルファ・グルコシダーゼ阻害薬 (αGI薬) は、
食物性糖質の1000倍も親和性の強い糖質類似物質です。
糖質が吸収されるためには、澱粉のような多糖類から消化酵素の作用を得て、
二糖類(麦芽糖や蔗糖)、単糖類(ブドウ糖や果糖)に分解される必要があります。
その酵素、α-グルコシダーゼを阻害し、消化吸収を緩徐にすることで、
血糖の上昇をおさえるので、食後過血糖改善薬とも言われています。
一般名
|
商品名
|
血中半減期
(hr)
|
作用時間
(hr)
|
一日使用量
(mg)
|
アカルボース
|
グルコバイ®
|
?
|
2~3
|
150~300
|
ボグリボース
|
ベイスン®
|
?
|
2~3
|
0.6~0.9
|
ミグリトール
|
セイブル®
|
?
|
1~3
|
150~225
|
これらの薬物は血糖値の食後のピークを減少させ、
食事とともに摂取すると有効であるが、
食事以外の高血糖の治療には有効ではありません。
鼓腸、膨満感、腹部不快感、下痢などの副作用がよく報告されています。
これらの原因は、消化されずに腸管にのこった糖類が醗酵し、
発生するガスによるものです。
αGIの継続的な使用によって、これらの副作用は軽減していく傾向があります。
しかし、炎症性腸疾患の患者では禁忌になります。
腸閉塞様症状に至る場合もあり、
糖尿病性神経障害で消化管蠕動障害がある場合は留意しなければなりません。
体質的に肝障害を来す例があるので、
肝トランスアミナーゼの定期的な観察を行う必要があります。
肝障害は薬物の中止とともに可逆的に改善し、αGIに体重増加作用はないため、
食事療法の妨げになりません。
少量から開始し、体を慣らしていくことで、
消化器症状によるQOL低下を防止できます。
αGI薬の使用中に低血糖が発現したときは、
澱粉や蔗糖では血糖上昇に時間が掛かるので、
ブドウ糖や清涼飲料水に砂糖の代用に使われているブドウ糖果糖液糖を
低血糖の処置に用います。
次回は、インスリン抵抗性改善薬について解説します。
2013年10月23日水曜日
糖尿病の治療⑥(薬物療法③)
今回は、速効型インスリン分泌促進薬、
フェニルアラニン誘導体(グリニド系)についてお話していきたいと思います。
主だった薬物は下記の表の通りです。
フェニルアラニン誘導体 (グリニド系) は、SU構造は持たないものの、
SU薬と同様に膵臓のランゲルハンス島β細胞のSU受容体(SUR1)に作用し、
インスリン分泌を促進させる作用機序を持ちます。
食後は吸収が悪くなるので食直前に内服します。
5~15分で薬効を来たし数時間で作用消失します。
この早く効いて、早く効果がなくなるという点がSU薬と大きく異なるところです。
食後血糖降下薬ともいわれ、SU薬がインスリン基礎分泌の促進、
グリニド系がインスリン追加分泌の促進と考えられています。
インスリン療法の超速効型インスリンと中間型インスリンの対応に似ていますが、
SU薬とグリニド系の併用は保険診療上認められていません。
なお、ナテグリニドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、
糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、
遷延性の低血糖を起こしやすい性質を持っています。
次回は、ブドウ糖吸収阻害薬について解説していきたいと思います。
フェニルアラニン誘導体(グリニド系)についてお話していきたいと思います。
主だった薬物は下記の表の通りです。
一般名
|
商品名
|
血中半減期
(hr)
|
作用時間
(hr)
|
一日使用量
(mg)
|
ナテグリニド
|
ファスティック®
スターシス®
|
0.8
|
3
|
270~360
|
ミチグリニドカルシウム水和物
|
グルファスト®
|
1.2
|
3
|
30~60
|
レパグリニド
|
シュアポスト®
|
1.0
|
5~8
|
0.75~3.0
|
フェニルアラニン誘導体 (グリニド系) は、SU構造は持たないものの、
SU薬と同様に膵臓のランゲルハンス島β細胞のSU受容体(SUR1)に作用し、
インスリン分泌を促進させる作用機序を持ちます。
食後は吸収が悪くなるので食直前に内服します。
5~15分で薬効を来たし数時間で作用消失します。
この早く効いて、早く効果がなくなるという点がSU薬と大きく異なるところです。
食後血糖降下薬ともいわれ、SU薬がインスリン基礎分泌の促進、
グリニド系がインスリン追加分泌の促進と考えられています。
インスリン療法の超速効型インスリンと中間型インスリンの対応に似ていますが、
SU薬とグリニド系の併用は保険診療上認められていません。
なお、ナテグリニドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、
糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、
遷延性の低血糖を起こしやすい性質を持っています。
次回は、ブドウ糖吸収阻害薬について解説していきたいと思います。
2013年10月21日月曜日
糖尿病の治療⑤(薬物療法②)
今回は、インスリン分泌促進薬であるスルホニルウレア剤 (SU薬)と
その関連薬についてお話していきたいと思います。
抗生物質の開発中、副作用の低血糖が起きて、薬効が発見され、
1950年代から使用されています。
開発された順に第一世代、第二世代、第三世代と分類され、
第一世代にはトルブタミドなど薬理学的には重要な薬物も含まれていますが、
近年新規に処方される薬は殆ど第二世代と第三世代なのでそれらを表にまとめました。
作用機序としては、膵臓のランゲルハンス島β細胞の
SU受容体のSUR1サブユニットに結合し、
ATP依存性Kチャネルを抑制することによって、インスリン分泌を促進させます。
SUは経口投与可能であり、肝臓で代謝されます。
主な副作用は、インスリン過剰分泌による低血糖になります。
従って、交感神経機能が障害されている患者、意識障害がある患者、
低血糖を認識できない高齢者、
低血糖に対して適切に対応できない患者は慎重投与する必要があります。
また、グリベンクラミド及びグリメピリドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、
糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、遷延性の低血糖を起こしやすい。
従って、腎機能低下が認められた場合、
代謝物の活性が低いグリクラシドやミチグリニドカルシウム水和物、
超持続型以外のインスリンの自己注射への変更を考慮していく必要があります。
SU薬は基本的にはインスリン基礎分泌を促進する薬であるため
食前に低血糖を起こしやすく、
インスリン追加分泌を促進しないため
食後高血糖のコントロールが困難になりやすい傾向があります。
このためHbA1cといった平均値のみで効果判定を行うと
コントロール良好であったにも関わらず心筋梗塞といった
大血管障害が起こる可能性があります。
インスリン分泌を高めることは同化反応を亢進させ、
体重増加を起こしインスリン抵抗性を悪化させることもあります。
これも空腹時低血糖により過食となり食事療法が乱れた場合との
区別が難しいとされています。
第三世代のアマリール®は従来のSU薬が持つインスリン分泌作用のほか
インスリン抵抗性改善作用があると考えられており、
副作用による体重増加が少ない。
そのため、空腹時低血糖による食事療法の乱れなども発見しやすく
好まれる傾向があります。
次回は、速効型インスリン分泌促進薬、
フェニルアラニン誘導体(グリニド系)について解説します。
その関連薬についてお話していきたいと思います。
抗生物質の開発中、副作用の低血糖が起きて、薬効が発見され、
1950年代から使用されています。
開発された順に第一世代、第二世代、第三世代と分類され、
第一世代にはトルブタミドなど薬理学的には重要な薬物も含まれていますが、
近年新規に処方される薬は殆ど第二世代と第三世代なのでそれらを表にまとめました。
一般名
|
商品名
|
血中半減期
(hr)
|
作用時間
(hr)
|
一日使用量
(mg)
|
薬効(参考)
|
グリベンクラミド
|
オイグルコン®
ダオニール®
|
2.7
|
12~24
|
1.25~7.5
|
強い
|
グリクラシド
|
グリミクロン®
|
6~12
|
6~24
|
40~120
|
弱い
|
グリメピリド
|
アマリール®
|
1.5
|
6~12
|
1~6
|
中
インスリン抵抗性改善作用あり
|
作用機序としては、膵臓のランゲルハンス島β細胞の
SU受容体のSUR1サブユニットに結合し、
ATP依存性Kチャネルを抑制することによって、インスリン分泌を促進させます。
SUは経口投与可能であり、肝臓で代謝されます。
主な副作用は、インスリン過剰分泌による低血糖になります。
従って、交感神経機能が障害されている患者、意識障害がある患者、
低血糖を認識できない高齢者、
低血糖に対して適切に対応できない患者は慎重投与する必要があります。
また、グリベンクラミド及びグリメピリドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、
糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、遷延性の低血糖を起こしやすい。
従って、腎機能低下が認められた場合、
代謝物の活性が低いグリクラシドやミチグリニドカルシウム水和物、
超持続型以外のインスリンの自己注射への変更を考慮していく必要があります。
SU薬は基本的にはインスリン基礎分泌を促進する薬であるため
食前に低血糖を起こしやすく、
インスリン追加分泌を促進しないため
食後高血糖のコントロールが困難になりやすい傾向があります。
このためHbA1cといった平均値のみで効果判定を行うと
コントロール良好であったにも関わらず心筋梗塞といった
大血管障害が起こる可能性があります。
インスリン分泌を高めることは同化反応を亢進させ、
体重増加を起こしインスリン抵抗性を悪化させることもあります。
これも空腹時低血糖により過食となり食事療法が乱れた場合との
区別が難しいとされています。
第三世代のアマリール®は従来のSU薬が持つインスリン分泌作用のほか
インスリン抵抗性改善作用があると考えられており、
副作用による体重増加が少ない。
そのため、空腹時低血糖による食事療法の乱れなども発見しやすく
好まれる傾向があります。
次回は、速効型インスリン分泌促進薬、
フェニルアラニン誘導体(グリニド系)について解説します。
2013年10月19日土曜日
糖尿病の治療④(薬物療法①)
今回は、糖尿病治療における薬物療法についてお話していきます。
糖尿病治療で用いられる経口血糖降下薬(OHA: oral hypoglycemic agent)は、
2型糖尿病において血糖値を正常化させることで
慢性合併症のリスクを軽減させる目的にて処方される薬物の総称です。
1994年までは米国でも使用できた薬物はインスリン分泌促進薬のみであったものの、
2008年現在、日本では
① インスリン分泌促進薬
② 速効型インスリン分泌促進薬
③ ブドウ糖吸収阻害薬
④ インスリン抵抗性改善薬
という4種類の薬物が入手可能になりました。
インスリン分泌促進薬としてはスルホニルウレア剤 (SU薬)、
速効型インスリン分泌促進薬としてはフェニルアラニン誘導体、
ブドウ糖吸収阻害薬としてはαグルコシダーゼ阻害剤 (αGI薬)、
インスリン抵抗性改善薬としてはビグアナイド剤 (BG薬)、
チアゾリジン系誘導体(TZD薬)が知られています。
また最近、ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤という
新しいジャンルの治療薬が登場しています。
日本では2009年10月にαGI薬のひとつ、ベイスン®が、
糖尿病発症予防の保険適応を取得しています。
次回から、経口血糖降下薬のそれぞれについて解説していきたいと思います。
糖尿病治療で用いられる経口血糖降下薬(OHA: oral hypoglycemic agent)は、
2型糖尿病において血糖値を正常化させることで
慢性合併症のリスクを軽減させる目的にて処方される薬物の総称です。
1994年までは米国でも使用できた薬物はインスリン分泌促進薬のみであったものの、
2008年現在、日本では
① インスリン分泌促進薬
② 速効型インスリン分泌促進薬
③ ブドウ糖吸収阻害薬
④ インスリン抵抗性改善薬
という4種類の薬物が入手可能になりました。
インスリン分泌促進薬としてはスルホニルウレア剤 (SU薬)、
速効型インスリン分泌促進薬としてはフェニルアラニン誘導体、
ブドウ糖吸収阻害薬としてはαグルコシダーゼ阻害剤 (αGI薬)、
インスリン抵抗性改善薬としてはビグアナイド剤 (BG薬)、
チアゾリジン系誘導体(TZD薬)が知られています。
また最近、ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤という
新しいジャンルの治療薬が登場しています。
日本では2009年10月にαGI薬のひとつ、ベイスン®が、
糖尿病発症予防の保険適応を取得しています。
次回から、経口血糖降下薬のそれぞれについて解説していきたいと思います。
2013年10月15日火曜日
糖尿病の治療③(運動療法)
今回は、糖尿病治療における運動療法についてお話していきます。
運動療法では、医師の指導に従って、
自分に適した運動メニューを作り実行することが重要です。
いきなり激しい運動をするのは避け、徐々に運動を習慣づけるようにしましょう。
運動療法には以下のような効果があります。
運動の急性効果として、ブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され血糖が低下します。
運動の慢性効果として、筋への糖取り込み率を高め、インスリン抵抗性が改善します。
エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善され、減量効果があります。
加齢や運動不足による筋萎縮や骨粗鬆症の予防に有効です。
高血圧や脂質異常症の改善にも有効です。
有酸素運動とレジスタンス(抵抗)運動がインスリン抵抗性の改善に有効とされています。
前者としてはジョギング、水泳、後者としては水中歩行が挙げられます。
治療効果が見込める運動量としては、歩行として1回15分以上を一日二回、
1週間に3日以上が望ましいとされています。
消費エネルギーとしては200Kcal程度であり、運動による減量はほとんど期待できません。
減量は食事療法によって行い、
運動療法はあくまでもインスリン抵抗性を改善させる目的で行うことに注意しましょう。
即ち、糖尿病治療中で運動をした分食事を増やすというのは、全く治療になっていません。
糖尿病における運動療法で気をつけるべき点としては低血糖発作であります。
特にSU薬を用いていると空腹時低血糖を起こしやすいので、
食前の運動を避けるといった工夫が必要な場合もあります。
また、糖尿病慢性期合併症が生じてしまったら
運動療法は行わない方が良いと言われています。
網膜症があれば、低血糖をおこし交感神経が反応し
高血圧になると網膜剥離を起こすこともあります。
腎症があれば、運動でタンパク尿は増えて、腎臓をさらに障害します。
神経症があれば運動は怪我のリスクとなります。
医師の指導に従い、食事療法と運動療法を上手に組み合わせることが、
血糖値コントロールの第一歩になります。
次回は、薬物療法について解説していきます。
運動療法では、医師の指導に従って、
自分に適した運動メニューを作り実行することが重要です。
いきなり激しい運動をするのは避け、徐々に運動を習慣づけるようにしましょう。
運動療法には以下のような効果があります。
運動の急性効果として、ブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され血糖が低下します。
運動の慢性効果として、筋への糖取り込み率を高め、インスリン抵抗性が改善します。
エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善され、減量効果があります。
加齢や運動不足による筋萎縮や骨粗鬆症の予防に有効です。
高血圧や脂質異常症の改善にも有効です。
有酸素運動とレジスタンス(抵抗)運動がインスリン抵抗性の改善に有効とされています。
前者としてはジョギング、水泳、後者としては水中歩行が挙げられます。
治療効果が見込める運動量としては、歩行として1回15分以上を一日二回、
1週間に3日以上が望ましいとされています。
消費エネルギーとしては200Kcal程度であり、運動による減量はほとんど期待できません。
減量は食事療法によって行い、
運動療法はあくまでもインスリン抵抗性を改善させる目的で行うことに注意しましょう。
即ち、糖尿病治療中で運動をした分食事を増やすというのは、全く治療になっていません。
糖尿病における運動療法で気をつけるべき点としては低血糖発作であります。
特にSU薬を用いていると空腹時低血糖を起こしやすいので、
食前の運動を避けるといった工夫が必要な場合もあります。
また、糖尿病慢性期合併症が生じてしまったら
運動療法は行わない方が良いと言われています。
網膜症があれば、低血糖をおこし交感神経が反応し
高血圧になると網膜剥離を起こすこともあります。
腎症があれば、運動でタンパク尿は増えて、腎臓をさらに障害します。
神経症があれば運動は怪我のリスクとなります。
医師の指導に従い、食事療法と運動療法を上手に組み合わせることが、
血糖値コントロールの第一歩になります。
次回は、薬物療法について解説していきます。
2013年10月12日土曜日
糖尿病の治療②(食事療法)
今回は、糖尿病治療における食事療法についてお話していきます。
糖尿病治療の基本はエネルギーの制限です。
2型糖尿病の場合には、肥満によるインスリン抵抗性を改善するために、
エネルギーを制限することが望ましいと考えられています。
日常の生活強度に合った食事をする必要があります。
目安としては、デスクワークの多い成人男性では、
1500kcal~1600kcal(約20単位)ということになります。
1日当たりの総エネルギー量 = 標準体重 × 生活活動強度指数
標準体重(kg) = 身長(m) × 身長(m) × 22
生活活動強度指数
軽労働(主婦・デスクワーク):25~30kcal/kg
中労働(製造・販売業・飲食店):30~35kcal/kg
重労働(建築業・農業・漁業):35kcal/kg
で計算し、食事量を決める必要があります。
エネルギー量の計算は、80kcalを1単位として計算する方法が簡単で、一般的です。
また、近年エネルギー制限だけではなく糖質の制限といった
食事療法もおこなわれているようです。
食後血糖値を上昇させる唯一の栄養素が糖質であり、
超低糖質食の実践者が2型糖尿病でインスリン分泌能が低下していたにもかかわらず、
その過半数の人の空腹時血糖値や HbA1c は正常値を維持しており、
また、その他の数値も正常であり、
超低糖質食の効果と長期安全性についても確認できたとする報告があります。
次回は、運動療法について解説していきたいと思います。
2013年10月10日木曜日
糖尿病の治療①(概要)
今回から糖尿病の治療についてお話していきたいと思います。
今回は糖尿病治療の概要についてお話します。
糖尿病の治療では、糖尿病患者における血糖のコントロールが重要になってきます。
血糖コントロールの目標は、糖尿病性昏睡や低血糖を起こすことなく、
糖尿病慢性期合併症を予防することです。
ポイントは、以下の3点です。
① 糖尿病の治療は、病因、又は重症度(進行度)によって異なります。
2型糖尿病初期において最も重要なのは、“食事療法”と“運動療法”になります。
② 食事療法、運動療法でコントロールがつかない場合は、
経口血糖降下薬、インスリンといった薬物を使用します。
③ 治療の効果判定は、血糖値に準ずるパラメーターで行うこととなっています。
治療する目的は、糖尿病の各種合併症を未然に防ぐことになります。
では、どのようにするかというと、初期糖尿病の治療で重要なのが、
食事療法と運動療法になります。
高血糖ストレスによるインスリン分泌細胞の疲弊、
死滅が進行する前に開始することが望ましいとされています。
耐糖能異常の段階から生活習慣の修正や体脂肪減量を行うことが、
糖尿病の発生を防ぐために推奨されています。
体脂肪の中でも内臓脂肪の減量が重要とされ、インスリン抵抗性を解除し、
高血糖状態からインスリン分泌低下の悪循環を和らげることができます。
これは糖尿病の進行がどの段階でもいえることです。
糖尿病の診断がつく前、いわゆる境界型糖尿病の段階から行うべき治療です。
特にIGTといわれる境界型糖尿病では、
大血管障害のリスクが高いため積極的な治療が必要と考えられており、
ビグアナイド薬やαグルコシダーゼ阻害剤といった経口血糖降下薬も
生活習慣の改善には劣るが、効果があると言われています。
これらの内服は食事、運動の改善が不可能な患者にも一定の効果はあるものの、
糖尿病の進行を必ずしもくいとめられるわけではなく、
治療方法もガイドライン化されていないのが現状です。
次回は、食事療法について解説していきます。
今回は糖尿病治療の概要についてお話します。
糖尿病の治療では、糖尿病患者における血糖のコントロールが重要になってきます。
血糖コントロールの目標は、糖尿病性昏睡や低血糖を起こすことなく、
糖尿病慢性期合併症を予防することです。
ポイントは、以下の3点です。
① 糖尿病の治療は、病因、又は重症度(進行度)によって異なります。
2型糖尿病初期において最も重要なのは、“食事療法”と“運動療法”になります。
② 食事療法、運動療法でコントロールがつかない場合は、
経口血糖降下薬、インスリンといった薬物を使用します。
③ 治療の効果判定は、血糖値に準ずるパラメーターで行うこととなっています。
治療する目的は、糖尿病の各種合併症を未然に防ぐことになります。
では、どのようにするかというと、初期糖尿病の治療で重要なのが、
食事療法と運動療法になります。
高血糖ストレスによるインスリン分泌細胞の疲弊、
死滅が進行する前に開始することが望ましいとされています。
耐糖能異常の段階から生活習慣の修正や体脂肪減量を行うことが、
糖尿病の発生を防ぐために推奨されています。
体脂肪の中でも内臓脂肪の減量が重要とされ、インスリン抵抗性を解除し、
高血糖状態からインスリン分泌低下の悪循環を和らげることができます。
これは糖尿病の進行がどの段階でもいえることです。
糖尿病の診断がつく前、いわゆる境界型糖尿病の段階から行うべき治療です。
特にIGTといわれる境界型糖尿病では、
大血管障害のリスクが高いため積極的な治療が必要と考えられており、
ビグアナイド薬やαグルコシダーゼ阻害剤といった経口血糖降下薬も
生活習慣の改善には劣るが、効果があると言われています。
これらの内服は食事、運動の改善が不可能な患者にも一定の効果はあるものの、
糖尿病の進行を必ずしもくいとめられるわけではなく、
治療方法もガイドライン化されていないのが現状です。
次回は、食事療法について解説していきます。
2013年10月9日水曜日
糖尿病の検査
今回は、“糖尿病の検査”についてお話していきたいと思います。
糖尿病の検査で主だったものといえば、
「血糖値」と「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」の2検査かと思います。
血糖値は、食事を食べたり運動をしたりすることで容易に変動します。
朝起きてから食事を摂らず測定した空腹時血糖と、
どんな時に測ってもよい随時血糖が評価の対象になります。
常用負荷血糖(普段の食事をして測定した血糖)では、
食事開始(箸をつけて)から1時間後の
Post Prandial Glycemia 1hr(PPG1hr)がピークとなることが多いとされ、
有望視されています。
過去1~2ヶ月の血糖値の平均値を表すとされています。
HbA1c 6.5%未満をコントロール良好とします。
食生活による変動が激しいことも知られており、
最近過食気味といったエピソードがあるだけで、
糖尿病の診断で偽陽性と診断されてしまうこともあります。
肝硬変、溶血の患者では低めに出ることが知られており、
その場合はグルコアルブミン(直近2週間程度の血糖値の平均値)を
代用することがあります。
HbA1cは5.8%以下で正常、
6.5%以上で糖尿病と言われていますが、
OGTTに基づく診断では、
正常型、境界型、糖尿病型の各型とも
広範囲に分布するためoverlapすることが多く、
境界型糖尿病の診断や糖尿病の否定などには
用いることができないと言われています。
5.8%より大きい値が出たら境界型糖尿病なども疑い精査する必要があります。
次回から糖尿病の治療について解説していきます。
糖尿病の検査で主だったものといえば、
「血糖値」と「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」の2検査かと思います。
<血糖値>
血糖値は、食事を食べたり運動をしたりすることで容易に変動します。
朝起きてから食事を摂らず測定した空腹時血糖と、
どんな時に測ってもよい随時血糖が評価の対象になります。
常用負荷血糖(普段の食事をして測定した血糖)では、
食事開始(箸をつけて)から1時間後の
Post Prandial Glycemia 1hr(PPG1hr)がピークとなることが多いとされ、
有望視されています。
<ヘモグロビンA1c(HbA1c)>
過去1~2ヶ月の血糖値の平均値を表すとされています。
HbA1c 6.5%未満をコントロール良好とします。
食生活による変動が激しいことも知られており、
最近過食気味といったエピソードがあるだけで、
糖尿病の診断で偽陽性と診断されてしまうこともあります。
肝硬変、溶血の患者では低めに出ることが知られており、
その場合はグルコアルブミン(直近2週間程度の血糖値の平均値)を
代用することがあります。
HbA1cは5.8%以下で正常、
6.5%以上で糖尿病と言われていますが、
OGTTに基づく診断では、
正常型、境界型、糖尿病型の各型とも
広範囲に分布するためoverlapすることが多く、
境界型糖尿病の診断や糖尿病の否定などには
用いることができないと言われています。
5.8%より大きい値が出たら境界型糖尿病なども疑い精査する必要があります。
次回から糖尿病の治療について解説していきます。
2013年10月8日火曜日
糖尿病の診断
今回は、糖尿病の診断についてお話していきたいと思います。
日本では、日本糖尿病学会1999年の診断基準を用いています。
空腹時の血糖または75g経口ブドウ糖負荷試験で診断します。
空腹時に126mg/dl以上の血糖があれば、
ブドウ糖負荷をしなくても糖尿病型と判定されます。
通常は判定を2回繰り返し、
2回とも糖尿病型であれば糖尿病と診断します。
口渇や多飲、多尿などの典型症状や、
糖尿病性網膜症が存在する場合や、
HbA1cが6.5%以上である場合は、
1回だけの判定で糖尿病と診断する場合もあります。
空腹時血糖110-126mg/dlをImpaired Fasting Glucose, IFGと呼び、
75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が140-200mg/dlであるものを
耐糖能異常; ImpairedGlucose Tolerance, IGTと呼びます。
IGTはいわば「糖尿病予備軍」と言える病態であり、
臨床上の糖尿病との違いは合併症があるかないかという点でした。
しかし、現在、IGT患者にも神経障害、心筋梗塞、動脈硬化をはじめとした
合併症が出現することが知られており、
糖尿病とはっきり区別する意味は希薄になってきています。
糖尿病と診断したら、次に必要なのはどういった糖尿病であるのかを把握し、
それにも基づいた治療を考えることです。
これらを行うためには、糖尿病が発症した原因と引き金、
高血糖の程度と持続時間、合併症の程度を把握することが
重要であるとされています。
次回は、糖尿病の検査について解説していきます。
日本では、日本糖尿病学会1999年の診断基準を用いています。
空腹時の血糖または75g経口ブドウ糖負荷試験で診断します。
空腹時に126mg/dl以上の血糖があれば、
ブドウ糖負荷をしなくても糖尿病型と判定されます。
空腹時血糖(mg/dl)
|
2時間後血糖(mg/dl)
|
|
正常型
|
110未満
|
140未満
|
境界型
|
126未満
|
200未満
|
糖尿病型
|
126以上
|
200以上
|
通常は判定を2回繰り返し、
2回とも糖尿病型であれば糖尿病と診断します。
口渇や多飲、多尿などの典型症状や、
糖尿病性網膜症が存在する場合や、
HbA1cが6.5%以上である場合は、
1回だけの判定で糖尿病と診断する場合もあります。
空腹時血糖110-126mg/dlをImpaired Fasting Glucose, IFGと呼び、
75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が140-200mg/dlであるものを
耐糖能異常; ImpairedGlucose Tolerance, IGTと呼びます。
IGTはいわば「糖尿病予備軍」と言える病態であり、
臨床上の糖尿病との違いは合併症があるかないかという点でした。
しかし、現在、IGT患者にも神経障害、心筋梗塞、動脈硬化をはじめとした
合併症が出現することが知られており、
糖尿病とはっきり区別する意味は希薄になってきています。
糖尿病と診断したら、次に必要なのはどういった糖尿病であるのかを把握し、
それにも基づいた治療を考えることです。
これらを行うためには、糖尿病が発症した原因と引き金、
高血糖の程度と持続時間、合併症の程度を把握することが
重要であるとされています。
次回は、糖尿病の検査について解説していきます。
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