2013年11月3日日曜日

糖尿病の治療⑨(薬物療法⑥)

今回も、インスリン抵抗性改善薬についてお話していきたいと思います。


<チアゾリジン系誘導体(TZD薬)>

一般名
商品名
血中半減期
hr
作用時間
hr
一日使用量
mg
ピオグリタゾン塩酸塩
アクトス®
5
20
1545


ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ (PPAR‐γ) 作働薬

インスリン抵抗性改善薬とも呼ばれています。

核内受容体のひとつであるPPAR-γに結合し、

インスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする作用があります。

主として末梢組織のインスリン抵抗性改善に用います。

有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、

小用量で血糖降下作用を見る事が多いようです。

脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下するが、

その代わり肥満を助長しやすくなります。

塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトス®)だけが現在、国内で上市されています。

最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカール®)は肝障害の死亡例が相次ぎ、

その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わる

グルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると

特に副作用の発症率が高い事が示されました。

類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていませんが、

留意して使用するのが望まれます。

副作用として浮腫や貧血を合併することがありますが、

腎でのインスリン感受性亢進のため、

Naの再吸収を促進するためだといわれています。

脂肪細胞を分化誘導する一方で

骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと言われています。

副作用に浮腫があるために、心不全の既往がある患者には禁忌となります。

浮腫が出現しなくとも、効果が出ると体重が増加する傾向があるため、

食事療法のコントロールに気をつける必要があります。

大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者に対して、

心血管イベントの発症の抑制、

およびインスリン治療の導入を遅らせるという欧州での成績があるようです。


次回は、ペプチジルペプチダーゼ4 (DPP4) 阻害剤について解説していきたいと思います。



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